旧チンクことFIAT500の長い歴史は、1957年に登場した『ヌォーバ・チンクエチェント』(Nuova500)から始まる。
エンジンは、空冷2気筒の排気量わずか479ccのものをリアに搭載したRR(リアエンジン・リアドライブ)方式。その小さなボディサイズはその後に何度かマイナーチェンジを経た各タイプとも変わらず、基本設計は20年に渡りほぼ引き継がれた。
そのデビューから50年後のフィアット500のバースデー、2007年7月4日に、21世紀の新型チンクエチェントが発表されたのは記憶に新しいことだろう。今では新旧チンクエチェントの誕生日を祝うバースデーイベントが毎年開催されている。
戦後の貧しかった頃のイタリアで、市民階級である大衆から圧倒的な支持を得たヌォーバ・チンクエチェント(新500)は、まさにイタリア人の国民車であり生活のアシだった。
まず、最初期型ヌォーヴァのプリマ・セーリエが1957年に誕生。華々しくデビューするも最初はセールスに苦心したという。
そして1960年に灯火類、エンジン(499cc)等が改良された500Dが登場。このモデルから徐々に市民権を得ることに成功し始めた。500Dは約5年間ほど継続生産されることになる。前開きドアのクラシカルな初期型チンクエチェントは500Dまでを指し、プリマセリエはもちろん、実車ではなかなかお目にかかることのない珍しいモデル。
1965年更に安全性等の向上が図られ、後期型の始まりである500Fと進化する。最大の違いはボディ・パネル。そしてドアヒンジが前に変更された。外見上はドアの開く方向が逆なくらいしか判別しにくいけれど、500Dより細部の作り込みはかなり練られている。
ルパン三世が乗っているのはこのFタイプで、誰もが思い描く旧チンクらしい旧チンクは500Fだと思う。車体自体は日本でも手に入りやすい一方で、やはり人気がある分やや相場は高めとなっているようだ。
1968年には、500L(Lusso/ルッソ)という装備に豪華さが加えられたタイプも販売される。ルッソとは、デラックスやラグジュアリーさを意味するイタリア語。500Lは先述の500Fと同時生産されている。
Lタイプの豪華な装備としては、前後バンパーにオーバーライダーが取り付けられ、インストルメントパネルは安全性向上の為にプラスチックカバーで全て覆われている。スピードメーターも視認性の向上の為、角型メーターになり燃料計も組み込まれる。
1972年にはF・Lタイプに変わるFIAT500として最後のモデルの500Rタイプが登場。
主な変更点は、エンジンがFiat126用の総排気量594ccとなり、ホイールのデザインが変更。メーター・ハンドル等は500Lとは異なり、旧500Fタイプ型の形状に戻り、色だけが黒に変更されている。