フィアット車の歴史 FIAT500 / Nuova500 ABARTH 595 / 695 500D 1960-1965 ABARTH アバルト

旧アバルト595(オリジナルABARTH)はフィアット500Dをチューニングしたサソリ版チンクエチェント!

投稿日:2023-09-01 更新日:

 

 

webbi / Pixabay

旧アバルト595こそがヌオーバ500(フィアット500D)をチューンした元祖ABARTH!

ご存知『アバルト Abarth』社は、かつてイタリアに存在した自動車メーカー。1949年にFIAT社と同じく北イタリアのトリノに設立され、1971年にはフィアット社に買収されているが、今も昔も「世界で最もホットな小型車」として熱愛され続けている…!

サソリのエンブレムがトレードマークのABARTHについては、以前に別サイトにて少し触れたのだけど、比較的ライトユーザー向けの紹介程度なので、こちらのサイトでは今後もディープに書き綴っていけたらと思う。

サソリの車・アバルトとは?フィアットなのにABARTHブランドの理由は?エンブレムマークに込めた熱いスコーピオン魂!

1990年代以降は、フィアットが生産する車のグレードやモデル名として名前を残すのみだったものの、現在は、アバルト&C.社(Abarth&C. S.p.A)として再組織されて別会社となり、新型フィアット500のチューニングモデルの「アバルト500」そして現在は「アバルト595」を世に送り出している。

 

アバルト社の名称は、創業者のカルロ・アバルト(Carlo Alberto Abarth 1908-1979)その人の名前だ。フィアット車をベースに自社チューンしたレーシングカーで自動車競技に参加しながら、チューニング車やチューニングパーツを販売する会社だった。

カルロ・アバルトは1908年11月15日にウィーンで生まれたオーストリア人。

名字であるABARTHというスペルはイタリア語ではなく、カール(Karl)もドイツ語圏の名前。彼はイタリア系オーストリア人の父とオーストリア人の母から生を受けたからだ。

後にイタリアに移住し、市民権を得てからカルロ・アバルト(Carlo Abarth)というイタリア語読みの呼び名となった。

 

アバルトは、独自の自動車開発も手掛けていたが、その記念すべき第1号車「204A」のエンジンはフィアット製だった。そして、チューニング車として多く選択したのもフィアット車だった。

アバルトは、フィアット車をベースにボディに改良を加え、マフラーをはじめとする自社開発パーツを採用したコンプリートカーを製作する。

フィアットとアバルトは、フィアット車によるレースおよびスピード記録で、満足できる結果を残した場合にアバルトに報酬を支払うという契約を結び、2ブランドはより関係を強めていく。アバルトはその資金を元にレース参戦や、それを視野に入れたフィアットベースのコンプリートカーの開発を行った。

代表作はフィアット600(セイチェント)をベース車両そして1961年にデビューし、ツーリングカーレースを席巻した「850TC」、その発展型で1962年に登場した「アバルト1000TC」が有名。

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そして、フィアット500Dをベースにボアアップし、1963年に誕生した「アバルト595」、翌年1964年にストロークアップでさらなる排気量アップを果たした「アバルト695」だ。(現代版アバルトも595/695の名をオリジナルの旧アバルトから受け継いでいる)

レースフィールドで、小型軽量ボディにハイチューンを施すことが主流だった当時において、名実ともに最も有名とされるのはこの2台で、その栄冠の名は現代のアバルト車にも受け継がれている。

旧車のチンクエチェント時代に、その名の由来となる595cc排気量のチューニング・エンジンを携えて活躍した元祖FIAT/ABARTH595のオマージュとして現代版アバルト595が存在する。日本語読みでは文字通り「ごー・きゅう・ご」だが、イタリア語読みでは「チンクエチェント・ノヴァンタ・チンクエ」(cinquecento novanta cinque)である。

 

■ABARTH 595 フィアット500D直系のアバルトとして誕生

www.abarth.jp

1957年にデビューしたNuova500(ヌオーバ・チンクエチェント)、つまり我らの知るところの旧フィアット500にも、セイチェント同様の手法でチューンモデルを手掛けることになるABARTH。

アバルトは小型の500エンジンに専念するも、その容量を増やすことはせず、より高い圧縮比、より大きなWeberキャブレター、および排気システムを含むチューニング・調整を通じてのフィットネスを積極的に選択する。

1958 Fiat 500 Abarth at Monza

この「FIAT ABARTH 500」という文字の入った500Dは、1958年2月に7日間モンツァでデモ走行が行われた車体で、平均速度108km/hを達成し国内外から高い評価を受けたという。

合計6つの記録を破ったランの後、関心を持ったフィアット社との連携を深めることになり、ほどなく595/695の誕生へと繋がっていく。

 

そして1963年、ABARTHの成功と名声を決定的なものとした伝説的な名車であるフィアット・アバルト595シリーズがリリースされた。モータースポーツとストリートの両面で1970年代に至るまで怒涛の活躍を魅せることになる。

フィアット500D直系のABARTHバージョンとして登場したアバルト595は、見た目のボディこそフロントに蠍(さそり)のエンブレムを備える以外が基本的に500Dとほぼ同じ。内装もチンクエチェントの丸形メーターを流用していた。(回転計、油温計、油圧計を収めたメーターキットは別途オプションで設定可能だった)

しかしメカ的には、鋳造インマニ、エキマニ、ハイコンプピストン、コンロッド&クランクの軽量化およびバランス取り、大型キャブレター、大容量オイルパンなど多岐に渡る改造が施されたハイスペックなチューニング・チンクエチェントなのである。

仕上げられたコンプリートカーだけでなく、パーツ単体(キット)でも販売されていたので、ノーマルの『FIAT 500』を『ABARTH 595』にオーナー自らチューンアップすることもできた。

 

同年5月に595の姉妹モデルとして排気量を695ccまで拡大した695シリーズも登場(※上のカタログ画像は後の500Fベースのもの)

1966年からはベース車両を後期型のフィアット500Fのボディに変更して製造が続けられた。500D由来の前開きドアが、安全性向上のため前ヒンジの後開きドアになった点以外、外見上パっと見ではなかなか判別しにくいが、ドアノブの位置で分かる。

1971年の生産終了まで人々を魅了し続けたピッコロモンスター595。(同年にABARTH社はFIATに買収され、ラリーを中心とした競技車の製作を担当する部門となる。ABARTH独自の活動はここで終焉を迎えることとなる)

 

アバルト595で特徴的なのはやはりエンジンのチューニングで、各気筒に独立したヘッドを持つFIAT500のノーマルエンジンに対し、ABARTHは2ボーンヘッドを採用。ヘッドが肉厚な分、それだけでボアアップできるというメリットがある。

一体鋳造の専用シリンダーやピストン、新設計されたカムシャフト、大径のキャブレター(C28PB)などから紡ぎ出されるエンジン出力は、ベース車両であるフィアット500のノーマル18hpから約50%増の27hpまで引き上げられた。最高速度も120km/hに達する。ちなみに当時の販売価格は595,000リラだったらしい(けっこう語呂合わせ好きなイタリア笑)

旧車のフィアット500に乗ると実感するけど、同じマイクロボディな車体で120キロが出せるのは驚異的…!(ノーマルは限界走行で最高時速95kmのスペックだが、現存する旧車では普通は80キロ巡航くらいが精一杯)

1964年2月には更にパフォーマンスを高めた『FIAT ABARTH 595 SS』(esse esse/エッセエッセ)を輩出。

595 SS(イタリア語でSSはエッセエッセと読む)はエンジンの圧縮比を10.5:1まで高め、キャブレターをより大きなソレックス34PBICに換装。インテーク・マニフォールドを始めとする吸排気系が見直され、チューニングにより最高出力は32hpに引き上げられ、最高速度は130km/hをマーク。

1970年にはレース仕様の『FIAT ABARTH 595コルサ』が登場。オーバーフェンダーを備え最高出力は34hpまで高められた。

 

●排気量: 593.7cc
●ボア✕ストローク:73.5✕70mm
●最高出力:27hp/5000rpm

◆大容量オイルパンにはABARTHロゴ
ノーマルチンクの2リットルに対し、アバルトのオイルパンは4リットルと倍の容量を持つ。もちろんABARTHの刻印入り。空冷エンジンである旧チンク系統において、空冷すなわちオイル冷である。走行性能アップにはオイル量を充分に備える対策が不可欠なのだ。現在でも入手可能な定番チューニングパーツだが、当時物のABARTHオリジナルは少なくなってきていて、レプリカが多い。

◆タイヤは500Dと共通スペック
パワーを30馬力まで上げつつも、それを受け止め路面に伝えるタイヤは500Dと同じく125-12であった。上の写真は変更されているが、本来はホイールキャップの形状も500Dと同じもの。

◆アバルトチューンの心臓部はエンジン
専用ヘッドを与えられたことで、ボア径を73.5mmまで拡大したエンジン。ハイコンプピストンが与えられ、圧縮比は10.3:1に引き上げられた。

◆シートも500Dと共通
メカニズムにスペシャルパーツを奢りつつも、当時はインテリアも500Dと全く同じであった。現代ではバゲットシートに換装するのが定番のチューニング。

◆インパネも500Dと共通
ベースとなった500Dとインストゥルメントパネルも共通する。当時物はタコメーターや油温計も付いていなかった。

◆595専用エンブレム
フロントのスコーピオン・エンブレムの他、リアには専用品のABARTH595エンブレムを備える。

 

画像出典:https://www.abarth.jp/



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