最終型のRタイプ「500R(アール)」は、1972年から1975年まで製造。
チンクエチェントの後継機となる「フィアット126」と併売される形で販売された「500R」の「R」が意味するのは「Rivised(改訂版)」で、基本設計は500Fに準じつつ排気量は594ccに拡大、外観は新エンブレム(菱形のFIAT文字のみタイプ)を取り付けた以外に変更点はない。
後期型であった500Fと500L(ルッソ)の生産終了を受けた1972年、2代目チンクエチェントことNuova500は事実上の終焉を迎えることとなった。同年のトリノ・モーターショーで発表された126を後継車とする方針がFIATでは決まっていた。
しかし、その126発売と並行して、最後のチンクエチェントが500Rとして3年間も延命しているのはとても興味深い。位置付けとしては、126の廉価版という役割を担っていたが、イタリア人の国民車として長く愛されてきたからこそのアンコールでもあったのだろう。
内外装は、基本的に500Fに準じているが、エンジン周りは126のユニットが置かれている。またフロアパンも126から持ち込まれている。そもそも126自体が500をベースに開発されたRR車なので、その基本設計やメカニズム、部品パーツ類も共有している点が多い。(現在では、例えば太径ドライブシャフトなど、126用の強化パーツを500のレストアに流用するケースも多い)