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旧フィアット500のクラシックな丸型メーター『ヴェリア・ボルレッティ Veglia Borletti』の機能美

投稿日:2022-07-31 更新日:

Pixxelkunst / Pixabay

オールドチンクの丸型スピードメーターは、古めかしくてヴィンテージ感アリアリで、とっても可愛いと思うのだけれど… 実際に乗ってみるとあまり役には立たないんだなぁ、コレが(笑)

ピアジオのベスパとかチャオとさほど大差ない代物で、針はけっこうアバウトな動き方をする…

 

だが、それがいい。

 

旧チンクエチェントには、いわゆるタコメーター(トルクメーター)としての機能はなく、燃料計もせいぜいランプ点滅でそれとなーくざっくり教えてくれるだけの超シンプルな機能性。アナログ計器ならではのレトロさは堪らない!

ちなみに、ウチの旧チンクはメーターが故障していて、時おり針がビョーンビョーンと妙な動きをするので最近はややオブジェ気味(苦笑)スマホを速度計がわりにしてるけど、次の車検までには直すか交換しなきゃ~

 

ヌオーバ・チンクエチェントの後期型の500Lだと、イタリア語の『Lusso ルッソ』という名の通り、デラックス版・ラグジュアリー版だから、ここんとこのメーターが大型の四角いタイプとなっている。

これはこれで、モダンないい味わいを醸し出している。

ガソリン残量なんかも分かるから便利なのだけど、わざわざ丸型に交換するオーナーさんも少なくないと聞く。やっぱりルパン三世の影響力ゆえか、アニメに登場したモデルの500Fに寄せたモディファイをよく目にする。

本当に、偉大というか、不思議なクルマである。

象徴的ともいえる、古典的でアンティーク感すら漂わせるFIAT500の丸型メーターゲージは、車両の生産終了が訪れる日まで大きな変更を加えられることはなかった。

後期型チンクエチェントの中においても、最終型モデルとなる500Rでもメーターは変わらず同じデザインの丸型メーターを採用している。ちなみにカバーの色がブラックとなっている点が前期型との違いなので見分けられる。簡潔きわまったシンプルさは、むしろ厳格とも言えるし、美しい。

ちなみにオリジナルのABARTH595も基本的には同型なのだけど、スピード表記が130kmまで書かれている。速度の数字が細かめに刻まれているのも特徴だ。

旧車のアバルト(もしくはアバルト風モディファイが施されたチンクエチェント)の場合、計器類が拡張されていることが多く、イェーガーの3連メーターを備えていたりする。その辺の話はまた別の記事にて。

 

丸型メーターの製造元は、イタリアの会社『ヴェリア・ボルレッティ Veglia Borletti』。

同社の前身となったBorletti社は1897年にミラノの起業家ロムアルド・ボルレッティによって設立された。このBorletti社は1930年に時計製作を手掛けていたVeglia社を買収し、ヴェリア・ボルレッティとなる。

ちなみに、ベリアという書き方ならまだしも、べグリアとかヴェグリアという読み方は間違い。イタリア語で「gli」は「リ」と発音する。基本的にはローマ字読みでOKなイタリア語だけれど、少しだけ違っている部分もあるので要注意。

Veglia Borlettiは、ベスパ、ドゥカティ、モト・グッツィなどのバイクメーカーに計器類を供給することで有名となり、自動車産業でもフィアットをはじめアルファロメオ、ランチア、フェラーリなどで採用されることとなる。イタリア以外でも、たとえばドイルのメルセデス・ベンツなどにも1950年代以前のレーシングモデルに使われたりとクオリティにかなりの定評があったらしい。

ちょっとディープ寄りな古いイタリア車好きには、文字盤に『VEGLIA』と書かれたメーターは堪らない。

でも先述の通りボルレッティに吸収される前のヴェリア社は時計を専門に作っていた会社。しかも創業1896年とのことで、イタリアで最も古い歴史を持つ時計機器メーカーなのだ。1920年代当時の駅の柱時計も同社が製造していたという。

Veglia製のゼンマイ巻き目覚まし時計(La Sveglia di Veglia)。ノスタルジックで心地よいベルの音色は、かつてイタリアの駅のホームで鳴っていた時計の鐘の音とよく似ているそうだ。ちなみに時計はイタリア語でOrologio(オロロージョ)と言い、とても愛嬌のある響きである。

ボルレッティ社は、アルドとセナトーレという兄弟が興した会社でFratelli Borletti S.P.A(ボルレッティ兄弟 株式会社)が正式名称。こちらも時計製造はもとより、計測器類やミシンも手掛けていた工業製品メーカー。創業者のセナトーレ・ボルレッティは60年代にミラノの百貨店ラ・リナシェンテ(La Rinascente)のオーナーであったり、セリエAのインテル・ミラノの会長を務めたりと、後々のイタリア経済界で大きな力を誇った人物のようだ。

しかし、そんなVeglia Borletti社も1985年にマニエッティマレリ(Magneti Marelli S.p.A)に買収されてフィアット・グループの傘下に入っている。

イタリアという国はかつて自動車のパーツメーカー天国だったのだけれど、現在では大半がマニェッティ・マレリの吸収合併されている。つまりフィアット・グループの傘下。

旧車乗りの嗜みとも言えるキャブレターの超有名メーカー・ウェーバーもマニエッティ・マレリに。レンズカットの美しさに定評のある、昔のヘッドライトでおなじみキャレロ(Carello)もマニエッティ・マレリに。Vegliaに並びアバルト等のスポーツカーで人気のメーター・イエーガーもマニエッティ・マレリに。

そんなマレリも、2019年にカルソニックカンセイの親会社であるCKホールディングスに買収され、カルソニックカンセイと経営統合されている。

メーターゲージの前面からVEGLIAの文字はなくなってしまったものの、機器としての芸術性すら併せ持つ機能美は、残存するレトロな現物とともに自動車産業の歴史に足跡を刻んでいる。



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