誰もが一度は乗ってみたいと思ったことは多いでしょう、クラシックな旧車のフィアット500(旧チンクエチェント)
日本では、やっぱりルパン三世(特にカリオストロの城)の影響は根強くて、フィアット・チンクエチェントと言えばルパンの黄色いクルマが最初に思い浮かぶくらい。たぶん多くのニッポン人がそうだったのだと思う。
しかし時代は令和。
ルパン大好き世代も、実はチンク同様にオールドタイプ側なので、重力に縛られているのかもしれない…
昔の古いオリジナル・アバルトにも当然ながら憧れはあるけれども、あっちは本気の伝説クラス。たしかに現存はしているものの、フツウは所有できない類のもの。(すくなくとも僕の人生では無理なので欲しがらないようにしている。新しい方のサソリマークにそのうち乗れたらイイナぁ)
ちなみに、故モンキー・パンチ氏の原作にチンクは登場しておらずアニメオリジナルの設定とのこと。
作画監督の故・大塚康生氏の愛車だったFIAT500を宮崎駿氏が作中に採用したというのは有名な話。TV第1シリーズの後半からルパン一味が乗り始めるのだけど、次元や不二子ちゃんが運転してるシーンもある。
(実は当初アニメは視聴率不調で、ばりばりのハードボイルドから路線変更。よりコミカルに描くためのアイコンとして宮崎駿氏がルパン達をチンクに乗せたそうな)
そんな旧フィアット500も、今ではもはや半世紀以上も前のクラシックカーになってしまっている。
僕が若い頃はまだレトロやヴィンテージの範疇だったけれど、もう立派なヒストリックカー。"La Nuova 500"(ラ・ヌォーヴァ・チンクエチェント)として最初期型の『プリマ・セーリエ Prima serie』(伊:ファーストシリーズ)がイタリア・トリノで誕生、デビューしたのが1957年7月4日。すでに60周年も経過してしまった。
しかも、いよいよをもってFIATも電気自動車にシフト。フィアット500evが2020年にデビュー。
当然ながら、現代の自動車(いわゆるイマ車)みたいな感覚ではとてもじゃないけど扱えないけれど、だからと言って、所有できないとあきらめてしまうのはモッタイナイことです。
見た目の可愛さはもちろんだけど、今のクルマでは味わえない運転の楽しさの原点みたいなものがあって、少しくらいメンテナンスに苦労したって、クルマ好きなら一生に一度は所有して乗ってみる価値は充分にあると断言しましょう。
少なくとも、夢や憧れだけで終わってしまうほどハードルが高いわけではない!と個人的には思うので、さほどマニアックではない一般的な自動車ユーザーであっても乗ること自体は実現可能。しかし持続できるかは別問題なので、あしからず(苦笑)
もちろん、レゴブロックだけで満足するのも健全(笑)
それでも、まあ、
乗るからにはキチンと維持すべきだし、
心配に思うのは当たり前の心情で、お金もそれなりに工面できなきゃダメだし、何より安全性能のこともやっぱり大事。自動車を便利な移動手段として定義するならば、危険を顧みず無理して乗るものでは決してないのだ。
だから、それでも乗りたいと思える情熱のようなアツさは必要かもしれない。もしかしたら憧れだけじゃ足りないかもしれないけれど、旧車って、きっとそう。可愛いとかオシャレ感覚だけだといずれシンドくなるのは必至…
では、そもそも旧チンクは買えるのか?
―答えはイエス
でも、50年も60年も前のオールドチンクなんて見つけるの大変なのでは?
―答えはノー
タイプにこだわらないなら、ヴィンテージな旧車とはいえクラシックなフィアット500を探すのは実はそんなに難しいことではない。もし手元に200万円ほどあれば、思い立ったらすぐ買えちゃうくらい入手可能ではある。
それだけ多くの500が生産され、人々に愛され、維持されてきたということ。
情報源としては、既に絶版となっている書籍も多いのだけれど、わりとAmazonの中古やフリマアプリ、オークションなどでも手に入ったりする(多少はプレミア価格になってる場合もあるけど)
新しいムック本とかもちょくちょく出版されてるし、何より今の時代はネットという情報源があるので、専門店・ショップを探し出すのもさほど難しくはない。
さて、まずはレストアベースとなる500車両本体の相場としては、おおよそ100万円前後(最近はもうちょっと高いかもしれない)。ボディ錆など程度が悪かったり不動車だと50万を切る個体も散見はするけれど、一人前の状態に仕上げるにはかえってコストが掛かっちゃうかも?(その修復過程こそを楽しみたいエンジニアタイプに人でないとモチベーション的にも難しい)
ほどほどの程度のベース車100万に、ボディの状態、機関の状態が加味されて値付けされ、古いイタリア車の専門店によるフルレストア完品なら200~250万円(もしくはそれ以上)。
タイプ別で言えば、見つけやすいのはルパン型としても有名な500F(エフ)で、生産台数が多いこともありタマ数は比較的豊富といえるモデル。それに、ルパン三世のお膝元ゆえか日本での人気が高く、数多く輸入されている車種だから需要に対する供給も充分。中古車市場でも見つけやすい。
いわゆるザ・チンクエチェント敵な、ルパン三世「カリオストロの城」のイメージ通りの旧フィアット500だけど、エンブレムやバンパーを付け替えてモディファイし、後述の500L(エル)や500R(アール)からコンバートしてる車体もあるので、普通の中古車屋さんとか専門ショップでないお店から購入する場合はちゃんと調べた方がよろしいかと。
車体番号(シャシー番号)で年式は判別できるので。
次に同じく後期型モデルの500L(エル / Lusso)も、製造期間が長くて生産台数が多い。バンパーオーバーライダーが付いているので、モディファイした個体でなければ一見して500Lだと分かる。
Lusso(ルッソ)というのは豪華版という意味なので、動力性能面でのスペックは500Fと違いはないものの、四角いワイドなメーターやリクライニングするシートなど、まさにデラックス仕様の高級グレードに位置付けられる。コイツをルパン三世っぽい外観にアレンジする乗り手も多いようだ。
一方で、最初期型のプリマ・セリエに次ぐ、前開きドアの前期型500D(ディー)はタマ数も少なく滅多にお目にかかれない。現存する個体も年式的に古い部類になるため、程度の良いクルマを見つけるのはコネやルートが必要かも?
もちろんPrima Serieのオリジナルはチンクエチェント博物館レベルのレアなヴィンテージ・チンクである。
メカの得手不得手はともかく、知識として結構詳しく知っていないと、ちょっとヤフオクとかの個人売買でGETするのはリスキーな気もする。というか、500Dはともかくプリマ・セリエはそこらでは見つからないかなー。
このクラシックなFIAT500のコマーシャルに出てくるのは500D(ディー)
そして、逆に年式としては最も新しい最終型の500R(アール)も、意外と有りそう無い個体とされている。製造台数が少ないようだ。(※500の製造終了が決まり、フィアット126へと移行する過程で、残っていたパーツを在庫一掃する目的で生産されたのが500Rとのこと)
人気のボディカラーは、やはり黄色系、水色系、クリーム色や白。オレンジやレンガ色などちょっとマイナーな色だと少し値付けが安いみたい。
どのタイプのチンクエチェントも長い年月を生きてきてるから、当時のオリジナル塗装のままという事はない。ちなみに自分好みの色にオールペンするとなると、いかに小さな500であっても予算は膨大となるので注意。
そして、忘れちゃいけないサソリのエンブレムマークの『アバルト ABARTH』タイプ。
詳しい説明は下記リンクの内容に譲るけれど、当時物のオリジナル・アバルト(595/695)というのはタマ数としては少ない希少車と言える。モディファイやカスタムでABARTH仕様にしてる旧チンクエチェントはけっこう多いけど、判別できるのは相当なマニアだけなので由緒正しきオリジナルは、まさに高嶺の花。というか幻。
本物の旧アバルトも絶対に入手不可能というわけではないだろうけど、かなーりイイ価格がついてるのは間違いなし。お金・人脈・コネクション・ルート、そういった全てを兼ね揃えつつ、誰よりもアツくなれる人にこそ相応しい。
FIAT500をはじめイタリア車・フランス車系を得意とする専門店・スペシャルショップでの購入が、後々メンテナンスを依頼することを考えれば王道ルートだとは思うけれど、ヤフオクなどのネットオークションや個人売買で掘り出し物が見つかることもあるので、そこは考え方次第。しかし、後者の場合はそれなりに知識と選球眼が求められる。
必ずしも前オーナーさんが良好な状態で維持してくれてるとは限らないし、あるいはクセのあるカスタムが施されていて運転しにくくなってる場合もある。改造はバランスよく行わないとリスキーでもあるので。
本当に、必要最低限のパーツで構成されたメカニズム的にもシンプルの極みな旧チンクエチェント。
多少ボアアップした個体で排気量は650cc程度と小さいながらも、車重が500kgくらいの軽さだからパワーとしては充分。各部のパーツも多くないし比較的安い。心臓部であるエンジンは、古くても頑丈なOHVエンジンなので、既に故障持ちだったり著しく程度の悪い個体でない限りは壊れる心配はしなくていい。タイミングベルトもない。メンテナンス自体の難易度もそこまで高くはない(…と、チンク乗りは皆そう言う笑)
たしかに、パーツ類も、手に入らないものは無いと言われるほど潤沢ではあるので困ることはほぼ無いかと。ボディパーツも新品が手に入るそうだし、価格も目が飛び出るほど高いわけではない(そうは言っても小遣いが飛ぶのは致し方なし)とは思う。実際に旧チンクが全盛だった1960~1970年代よりも、むしろ現在の方が部品は充実しているとさえ言われているし、実際そうなのだろう。これは売る方も、買う方も、きっとインターネットの恩恵が多大だよね。
実車に触れてみると、もっと素直に受け入れられるけど、本当に単純明快なメカニズム。
もちろん素人がDIY整備するには勉強も必要だし、道具も揃えなきゃだし、ちょっと本腰を入れないと自主メンテナンスは楽チンクとは言い難い。それに、こういうのって当然ながら向き不向きもある。メカが苦手でもクルマの運転が好きな人はいっぱいいる(というか大半はそうだと思う)。ちゃんと整備して診てくれるショップとのお付き合いさえ確保していれば問題ナシ。
それを前提として、オーナー・ドライバーが普段のメンテナンスで気を付けたいのは主にオイル管理。空冷エンジンなので、オイル自体がエンジン冷却のための重要ファクタではあるので、エンジンオイルの量は日常的にレベルゲージをチェックしたい。そしてオイル交換くらいは自分でやってしまえれば尚良し。
アバルト型の大容量オイルパンに換えるのが定番チューニングだけど、普通に公道でお散歩する程度ならオリジナルのノーマルでも充分。オイル量さえ水準域をキープできてれば基本的にオーバーヒートの心配はない。(ただ、真夏日や高速での長時間走行などは要注意!)
そして、点火系も大事。止まってしまう要因になりやすいのはココ。スパークプラグとポイントくらいは毎回ではないにしろ、自分でチェックできるよう覚えておいて損はないかなー。だいたいエンジンの掛かりが悪いとかはプラグが怪しいので。あとはノンシンクロのMTミッションをいたわって操作する。それに尽きるのだけど、旧チンクエチェントの運転の仕方についてはまた別の記事で。